「のんびり行こうよ」 赤城智美 アトピッ子地球の子ネットワーク事務局長 第二回
「のんびり行こうよ」は、『アトピー最前線』50号(1999年4月号)~ 68号(2000年11月号)に不定期連載された、アトピー・アレルギー性疾患をもつ子どもの子育て奮戦記です。
第2回 こだわらないで楽になる
赤ちゃん時代のわが子を振り返ってみると、眠い時に頭や顔をかいていた姿を思い出します。おっぱいがなかなか出ず、母も子も1時間続けて眠ることができないような状態が半年も続いた頃、ほっぺが赤くなり、切れて体液が出るようになりました。同じ頃、おむつかぶれが始まり、あっという間に顔もおしりもまっ赤な赤ちゃんになってしまいました。
今でこそ、母乳の出が悪いとき、「自分の食生活をふり返ってみて、動物性タンパク質をとりすぎてはいないか、糖質や脂質をとりすぎて、ミネラルや、ビタミンが不足するような片寄った食生活をしていないか。とりあえずチェックしてみるといい」などと、若いお母さんにアドバイスしているのですが、当時はもう、睡眠不足とわが子の異変に圧倒されてしまって、食生活を振り返るどころではありませんでした。
よく考えてみると、母親の血液がそのままおっぱいになるわけですから、母親が食べた食べ物が、そのままおっぱいに反映してしまうということは、道理といえば道理なのですが、その時はひたすら、ほっぺやおむつかぶれを治してあげることばかりを考えていました。
むずかる子どもをベビーカーに乗せて、気分転換をはかろうと外に出てみると、道行く人は「まあほっぺが真っ赤じゃないの、ちゃんと洗ってあげているの」「泣いてる時はだっこしてあげなきゃ」と親切に、良かれと思って声をかけて下さいました。
お風呂にも入れている、沐浴もしている、おむつもきれいに洗濯しているし、しょっちゅう取り替えている。おっぱいの出は悪いけど、ちゃんとだっこしてあたえているし、もうこれ以上は無理という気持ちがあふれてしまって、ついに私は外にも出られなくなってしまったのです。
そんな時たまたま出会った小児科の先生が、「おっぱいにこだわりすぎないで、少しミルクを足してごらん」「布でかぶれてるのかもしれないから、紙おむつに変えてみたら」とアドバイスしてくれました。お医者さんが言うんだから、ちょっとだけならいいよね。まるで、いたずらを許された子どものような気持ちで、それまでこだわっていた「おっぱいと布おむつ」をかなぐり捨てて、試しにミルクと紙おむつに挑戦してみると、あら不思議、子どもはすやすやと眠り、あれだけ洗っても乾かしてもだめだった真っ赤なおしりが、あっという間にきれいになってしまったのです。
あの時の小児科の先生のアドバイスは、母乳の子育てを上手に支援するという意味では、医師にあるまじき言葉でしたし、「布でかぶれてしまう子ども」の本質的問題に迫ることができていない、不足だらけの内容でした。でも、あの時のわたしは、不眠と不安で冷静さを欠き、あと少しで育児ノイローゼになっていたのではないかと思います、かなり追いつめられて、身動きがとれなくなっていた時、世間一般の権威ある人の、こだわり放棄を許可してくれる発言は、とても、とてもありがたかったのです。
※『アトピー最前線』50号(1999年4月号)より転載